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当工房で行うサンドブラスト作業、当然専用の機械を使うのですが、
実は貧乏性で自作癖のある店主が自分で製作したものを使用しています。
・そんな手作りの機械でちゃんと商品になるの?
・危なくないの?爆発したり、煙が出たり、ホントはあるでしょ?
・手作りなんてどうせ長く使うこと出来ないし、
すぐ壊れたりするのがオチでしょ?
・空気が漏れたり、砂がこぼれたり、使い勝手悪そうw。
・実は買った方が安かった、なんてよくある話だし。
なんて思ったでしょう?。
いいんです。それが普通の反応ですから。
でも!、これが大丈夫なんです。案外いけるもんなんです。
そもそもブラストマシンを作ろうと思ったのは、2010年夏くらい。
初めは商用にするつもりなんか全然なくて、単純に
「これ、なんか自分で作れそうw」
って思ってしまったのがきっかけ。
作ったあと、何をするつもりだったんでしょうね。
”あれば何かに使えるツール”位に考えてました。
実はブラストマシンを自作している人、結構いるんですよね。
ネット検索すればすぐあれこれ出てきます。
私も製作段階でそれらのサイトを大いに参考にさせてもらい、
その上で、独自のシステムやアイデアを盛り込んで完成させました。
このページを作ったのは、それらの恩返しではないですが、
これから作ろうとしている人(いるのかな?)に少しでも
参考になればと思ったからです。
※制作は自己責任でお願いします。
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まず、ブラストマシンは大きく分けて、吸上式と落下式、直圧式があります。
・吸上式 : 圧縮空気の流れで砂を吸い上げ吹き付ける。
構造が簡単、大圧力で広範囲に吹ける。
反面、小圧力で繊細な作業には向かない。
・落下式 : 簡易版。最も構造が簡単で比較的安い。
基本的な構造はスプレーガンやエアブラシと同じ。
ちょっとだけ吹くのならこれでも十分可能。
・直圧式 : 砂のタンク内に圧力をかけて砂と圧縮空気を混ぜる。
小圧力でも安定して吹付できる。
反面、大圧力広範囲の作業には向かない。
結局どれがいいの?となれば、断然直圧式です。
墓石を深く削ったり、巨大な作品、大掛かりな仕事が無いなのなら
直圧式で十分。小圧力といってもガラス瓶に穴を開けるくらい朝飯前の威力です。
吸上式は圧力を下げると砂が吸い込めず細かい作業に向きません。
と、いうことで直圧式の具体的な構造がこれ。
え?これだけ?
と思うでしょう。実はこれだけなんです。仕組みはとっても単純。
これなら、なんか自分で作れそうと思うのも無理もない。
実際にはもう少しいろいろ部品が付きます。それらは追々。
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まず、作る上で決めなければならないのがこれ。
砂を入れる容器です。
決める条件としては、
・下部が砂が落ちやすいように漏斗形状になっていること。
・必要に応じて砂を止めるコックが付けられること。
・上部に砂を補充する蓋があること。
・加圧に耐えられる素材であること。←最も重要。
多くの場合、又、市販製品は鉄製のタンクを使っています。
流用して自作する場合、消化器を使うことも多いようです。
鉄製だとまず圧力に対しては十分な強度があるでしょうが、
加工にどうしても溶接を使いますよね。
当工房には溶接機も、溶接の有資格者もいません。
そこで、ここでは安価で手に入り、加工も容易、耐圧性能もある
「塩ビパイプ」を使います。
塩ビパイプの耐圧性能
ブラストする圧力に対して、塩ビパイプは本当に耐えうるのか?
これは結構重要事項なので検証しておきます。
暴発しないかビクビクしながら作業したくないですもんね。
塩ビパイプはたくさんの種類がありますが、手に入りやすい
一般用として大きく2種類に分けられます。
・VP管・・・主に上水道用。上水道は常に圧力がかかるので
肉厚で丈夫。
耐圧 0.75MPa(7.5kgf/cm2)=7.5気圧まで大丈夫
・VU管・・・主に排水、空調等圧力のかからない場所用。
VP管よりは薄い。
耐圧 0.6MPa(6.0kgf/cm2)=6気圧まで大丈夫
一般的に無圧力で使うことが前提のVU管ですら、6気圧(地上の気圧の6倍)で使っても大丈夫なようです。
で、ブラスト圧はいくらなのかと言うと、作品によりますが、大体
0.15MPa~0.05MPa。
硬いものや深彫りする場合でも 0.3MPa程度で十分です。
(実際今まで0.3まで上げたことはありません。せいぜい0.2止まり)
これ以上の圧力で使うのなら、吸上式の方が効率が良くなります。
つまり、VU管を使ってもほとんどの場合、許容の1/4~1/2程度なのです。
但し、ブラストタンクは、あちこち穴を開けて加工します。
当然許容圧力も下がります。歪みがあったりすると余計下がります。
そこで、私は製作する際の基準として、
・穴あけ加工部分はVP管、それも継手等で補強した部分に開ける。
・穴あけしない部分はVU管を使用する。
という事にしました。
※もちろん加工する際は自己責任でお願いします。メーカー保証など当然ありません。
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さて、制作を開始するワケですが、何から手をつけようか・・・・。
こういう時、一番テンションが下がるのは、やはり”作り直し”です。
一度作った部分がほかの部品と合わず、やり直しとなるのは時間的ロス以上に精神的ダメージがでかい。
まして、なんとなくで始めたブラスト製作ですからね。
テンション下がった途端、永久放置なんてことにもなりかねません。
じゃあまず一番融通の効かなそうな所から作って、他はそれに合わせる様にすれば、やり直しのリスクを抑えられるのではないか?と考えました。
砂混合部分の製作
砂と空気の混合部分、ここはガス管を使います。ガス管とはいわゆる鉄パイプ。ガス配管によく使われる為こう呼ばれています。
ここには流量調整コック、電磁弁等をつけなければならない上に剛性が必要となるので、ある程度の形が自動的に決まってしまいます。
という訳で、ここから作ることにしました。
んで、できたのがコレ。
このあとちょっと改良するんですが、基本はこの形です。サイズは1/2インチを使用。
砂・エア混合部のチーズ、ここはチーズ内部にちと細工をしています。
これをしないと、エアを止めた後も砂がどんどん落ちてきて大変なことになります。
エアを送るときは砂が落ち、エアを止めると砂も止まる。
そんな仕組みを盛り込んでいます。
そして電磁弁。
スイッチ一つで弁の開け閉めを行い、エアを操作します。
手動ボールコックをいちいち操作するのは超面倒。これが有ると無いとでは作業効率が雲泥の差となります。
そのスイッチはコレ。
あれ?これどっかで見たことあるぞ・・・・。
そう、壁につける家庭用照明スイッチ。
作業中は両手が塞がっている為、こいつを足で踏んでON・OFFします。
砂混合部分はとりあえずこんなとこで完成。
さて、次はこれを固定するスタンドを作るか。
スタンドの製作
作った砂混合部分に合うように、アングルで架台を組みます。
えーっと、なんか組立途中の写真しかありませんでしたが。
まあ、こんな感じに骨組みです。特に難しい箇所はありません。
しいて言えば、完成後にバランス良く立てる様に考えるくらいですか。
砂タンクの漏斗部分の製作
次は砂タンクを作るわけですが、経済性を考慮してVUφ75を使うことにしました。
ここは後に「もっと太いパイプで作ればよかった」と後悔した箇所です。
φ75だと入る砂の量が少ないのですよね;;。全開ノンストップで作業すると約30分で空になります。
せめてφ150位でつくればよかったな・・・。
2号機製作時は巨大タンク搭載したものになりそうです。
そして、ここは先述の通り塩ビパイプの穴あけ作業があります。
自社安全基準(?)に基づき、漏斗部分はVPエンドキャップを使います。
先端に穴を開け、ボールコックをねじ込み固定。
ボールコックのネジより少し小さい穴を開けて無理くりねじ込むのがコツ。
弱い部分となりやすい箇所なので注意が必要です。
砂タンク・混合部・スタンドの組立
さて、これまで作った部分の合体です。
上手くくっついてくれるのか・・・。
くっついた~ヽ(^o^)丿。 まあ、合う様に作ってるので当然ですが。
ちなみにこれは、完成後の写真です。
ここから完成まで夢中で作っていたので、写真撮り忘れていました。
なのでこのあとは完成写真を元に解説していきます。
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早速ですが、完成のお写真を掲載。
こんなんなりました。
なんだか一番最初の図と違って、配管が多く随分ややこしい感じになっていますが、そもそも配管は男のロマンです。ザクの配管が嫌いだったという人は見たことありません。
それはともかく、自分としてはなかなかコンパクトにまとまったのでは?と気に入っています。
①一番上のメーターが付いているところがタンク内加圧配管。
このメーターで、実際今どれだけの圧でブラストしているのかを見ます。
タンク内圧に異常が無いか、確認用でもあります。
②そのすぐ横に生えている赤いコック付き配管は、減圧用管。
掃除機に直結しています。
これの説明は後ほど。
③砂タンク胴体上部がでかくなっていますが、この部分は砂回収用ドラムです。
そこへ横から突っ込んでいる赤いコック付きの配管が砂回収管。
これら説明も後ほど。
④胴体下部の細い部分が、実際に砂をストックするタンク部分。
⑤その下で混合部に繋がり、
⑥手前の水色のホースでブラストします。
⑦砂タンク右側の小さなメーターはエア導入部のレギュレーター。
ここで導入圧力を調整します。
⑧角度的に写っていませんが、砂タンクの後ろにエアドライヤーポッドがあります。
図にするとこんな感じ。
解りますでしょうか?。
ではスタートのコンプレッサーから説明します。
まず重要なのは静音設計であること。うるさいと本当たまりません。
それでもなかなかの音なんですが。
・シンセイ EWS-30
・容量30L 1馬力 吐出量75L 最大圧力0.75MPa
これくらいの性能であれば、十分使えます。
次はレギュレータ
コンプレッサーにもレギュレータは付いているのですが、手元から遠いので使いやすい位置に追加しています。導入圧力はここで調整。
コンプレッサーからの管はメーター上側から入ります。
下に抜けた管はそのまま後ろのエアドライヤーポッドへ。
エアドライヤーポッド
左側が砂タンク、右側の短い塩ビ管がエアドライヤーポッドです。
大層な名前がついてますが、その中身は大量の「シリカゲル」。
エアはポッドの下から入り、シリカゲル層を抜けて水分が除去され、上から排出されます。
当初は市販のちっちゃな水抜きだけでいいだろうと思ってましたが、念には念を入れて設置しました。
結果は大正解!。梅雨時期なんか、ポッド内に水溜りが出来るくらい活躍してくれてます。
市販品だけだと多分、すぐ満水になるんじゃないかな?。
エアが乾燥していないと砂が固まったりして詰まる原因になります。
高級コンプレッサーにはこの機能が搭載されたものもあるみたいですが、「冷凍式」という、いかにもコストかかってますよ的なやつです。
1000円チョイで同じ機能がつくならこっちのがいいですよね。
さて、次。
一番奥に見えるのが「市販品水抜き」。どうだい?ちっちゃいだろぉ~?。
実質ここに水が溜まったことはありません。
そのすぐ次にある黒いのが電磁弁。
これを先述の照明スイッチでON/OFFします。
サンドブラストで何をするのか?にもよりますが、当店のように工芸が主であれば電磁弁はあったほうがいいと思います。
工芸では頻繁に吹いたり止めたりを繰り返す事になるので、すぐ止まる、すぐ吹けるというレスポンスはかなり重要な要素です。
一番手前にも電磁弁がありますが・・・・。これは大失敗でした。
実は奥の電磁弁でエアを止めても、タンク内の残圧が下がるまで、5秒くらいの間エアは出続けます。
それを解消しようと、奥の電磁弁と連動して、残圧除去用の弁を付けたつもりだったのですが、作動してみると残圧と一緒に大量の砂がここから吹き出して来ました(/ω\)。
考えてみれば当たり前のことなんですがね。
現在は封鎖しています。
次は砂混合部
エアドライヤーポッドを経由して、タンク内加圧管と分岐します。
※ この砂混合部分には内部にこのような細工をしています。
必須ではないですが、砂の出を安定させる効果があります。
砂混合部の手前にもボールコックを配置しています。その役割は、
タンク内圧と吹き出し圧力の調整をすることで砂の混合比率を調整します。
これも使用目的によっては無くてもいいものかもしれません。
既成製品には無い場合が多いですが、まあ要らなければ開きっぱなしにしておけばいいだけなので
付けといて損はないでしょう。
実際の使用時はノズル径少し違うだけでもずいぶん砂の出が変わってくるので
案外こまめに調整しています。
次に上部に分岐した、タンク内加圧配管
タンク加圧管は上部のフタから挿入しています。
レギュレータにもメーターがあますが、あれはON/OFFに関わらず常に一定の圧力を指しています。
対して、このメーターはON/OFFで変動するのはもちろん、吹付により減衰した圧力を指します。
実質、必要吹付圧力はこのメーターを見ながら、レギュレータを操作することになります。
その奥にある掃除機。
これはブラストした後の砂を回収するための吸引用として使います。
どういうことかと言うと、
こんな感じです。
ブラスト後の砂の回収は、手作業でやるのはけっこう面倒な作業なのですが、ウチではこのようにオートメーション化してみました。
タンク上部を加圧状態から減圧状態に切り替えて、掃除機スイッチオン!。
すると、キャビネット下に溜まった砂が吸い上がる。
そして回収ドラム部分で俗に言う「サイクロン現象」により、砂を分離。
砂だけ下へ、空気と細かい削りクズは掃除機へ。
という仕組みです。
だけど、実際に動かしてみるまでこんなに都合よく分離出来るのかな???って思ってました。
本当はサイクロンの部分、ちゃんと計算してやらないとダメなんだろうし。
風速とか、流体力学とか、砂の質量とか。
もちろんそんなのやってません。勘のみ。
こんな感じでどうだ!って作っただけ。
そして運命の初回収の日、ドキドキしながら掃除機のスイッチオン。
結果は・・・・ まさかの大成功www。
逆に「えっ?なんで成功したの?」って思ったくらい。
砂は全て吸い上げられ、掃除機には一粒も行ってませんでした。
正直、ここが今回の工作で一番心配なとこだったんですよね。
この日はぐっすり寝ることができました。
※ 砂の回収に初期は家庭用掃除機を使っていましたが、
抵抗が大きくなると勝手に吸引力が抑制される機能がすぐ作動して効率悪いので
現在は業務用集塵機を使っています。
まだまだ続きます。
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