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さて、
前回でブラストマシン制作はいちおう完了しましたが、これではまだ半分。
このままマシンを作動させると 部屋中雪景色のように真っ白な砂に覆い尽くされ、私のヒットポイントとメンタルポイントはあっという間にゼロになってしまいます。
ついでにパソコンやらプリンタやらも犬死です。
これを防ぐため、通常ブラスト作業は専用ボックスの中で行います。
今回はこいつを作ってみました。
さっそく模式図と完成写真を載せてみます。
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ブラスト作業中は常に集塵機を作動させて、削りカスを吸いながら吹き付けます。
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「作りたい作品が入る大きさであること。」
は当然として、じゃあでかければでかい程いいのかというとそうでもありません。
ボックス内は基本的に密閉空間です。
しかし、中で作業をする為に手を入れる穴を開けるのですが、
ここは内部に袖を付けて、砂が噴出しないようにしています。
内部の袖は手首までを隠す長さ。
手首部分はゴムで絞れるようにしておく必要があります。
これにぴったりの素材は・・・
スバリ、ナイロン製のズボンが最適。
股の付け根から豪快に切り裂いて使います。
ブラスト自体は素手で大丈夫。 |
そこでボックスが大きすぎると、内部が広くなるのはいいのですが、手を入れるところが狭いために 結局奥まで手が届かなかったり、作業しにくくなったりします。
それでも大きなものが作りたい!という方は、この部分を工夫する必要がありますね。自由に手が動き、なおかつ密閉を保つような。
今回作ったものはw600×L600×H600の大きさです。
ボックス内部は作業中、基本的に減圧状態となります。
砂が外部に漏れないようにする為には、
噴射する空気量より多くの排気を行うことになります。
ボックスはこの減圧状態に耐えうる素材でなければいけません。
そして、ブラストによって壁に穴が開かないようにする必要もあります。
今回は軽くて丈夫なMDF板を使いました。
そのままでは少し弱いので 各所を補強しながらですが。
壁の穴あき防止としては内部に塩ビ板を貼っています。
アクリル板はやがて穴が開きますが、塩ビ板は粘りがあるため、至近距離からの強圧噴射でも穴は開かないのです。
当たり前と言えば当たり前ですが、作業中にグラグラ揺れたり、隙間が出来たりしては話になりません。
全体にガッチリとしていることは重要です。
木工や金属加工でしっかりとした机を作れる方なら、何も問題無いですが
元来めんどくさがりの私はパソコンデスクを流用しています。
金属のフレーム、
しっかりとした天板、
キャスターがついていて、
屋根まである。
しかも安い!
まさにブラストボックスになる為に生まれてきたかのような素材。
それがパソコンデスク。
スライドテーブルや子棚などの無い、シンプルでちょっと大きめのやつ良いです。 |
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この写真は天板に穴を開けて、下部のアリジゴクを取り付けたところです。
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本当は”製作記録”なのだから、製作過程を挙げたいのですが
例によって夢中で作っていたら ほとんど写真を撮り忘れていました。
なのでブラストマシン同様、完成品の解説という形にします。
大きく5つに分けて解説していきます。
ここは、ブラストした砂を集積する部分です。
四角錐とするのが正道ですが、それにはちゃんとした角度の計算と正確な切り出し加工、そして微妙な角度で板材を貼り合わせなければなりません。
そして下向きに垂れ下がっているので、なんだか固定しにくそう。
「出来ないことないけど・・・めんどくさ。」
というのが正直 第一印象です。
そこで今回は下図のような、お手軽簡単アリジゴクにしてみました。
表現力の限界を感じてしまう図ですが・・・・。
こんな風に四角4枚で囲った中に 三角の板をはめ込む形です。
アリジゴク内はこんな感じ。
三角板は固定しようがないのでシーリングで貼り付けています。
角度はキツければキツいほどよく砂が落ちるので、全体のサイズと相談してなるべく鋭角にしましょう。 |
これなら設計も切り出しも、接合も簡単。
カドの部分も直角の付き合せばかりなので 補強しやすく剛性も問題ありません。
こうして集まった砂は、掃除機の吸引力によってサーバータンクへ回収されるワケですが、ここでポイントが一つ。
アリジゴクにどっさり溜まった砂を吸い上げるのは、家庭用掃除機にとって大変な重労働です。
細い管の中に比重の重い砂詰まっているわけですからね。
そこで必要に応じて吸気量を調整する弁を取り付けます。
アリジゴク部分がイッパイイッパイの時はここから適度に外気を吸い込むことにより、スムーズな砂の回収が可能になります。
吸気力は黒いダイヤルを回してバネ力により調整可能
バネの力を上回る吸引力が発生すると弁が開く仕組みです。
ここはアリジゴクの上部、作品を置く場所です。
ブラスト中は細かい削りカスと同時に、マスキングのクズも飛散します。
それを受け止め、アリジゴク内に落ち込まないようにステンメッシュを敷き、その上に作品を置く台として金網があります。
ウチの場合は、この金網を頻繁にめくってアリジゴクに落ちきらない砂を掃き落とす為
ここは固定していません。
このへんはまだまだ改良の余地ありですね。
ボックス上部にはいろいろ工夫が詰まっています。
ボックス内照明の蛍光灯。
ブラストは繊細な作業なので、照明は必須です。常に砂嵐に晒されるので、電球むき出しのものよりカバーのついたものの方がいいですね。
その向こうの塩ビ管。
これは集塵機に繋がる管なのですが、ここは試行錯誤中の箇所です。
この塩ビ管にはたくさんの穴が開けてあり、ここからボックス内の空気を吸い込むわけですが、砂まで一緒に吸ってしまわないように管の上側に穴があいています。
但し、この穴をどの角度に向けるのが最も良いのか?
穴を真上に向けると削りクズもほとんど吸わなくなり、真下に向けると砂を大量に吸い込む・・・。
ちょうど良い角度を探し中なのですが、なかなか難しいんですよね。
どなたかご存知の方、いらっしゃったらご一報願います(切実)。
次はこれ、
ボックス上部には開閉可能なスライド扉を付けています。
閉じた状態 開いた状態
わずか5センチほどですが、ここが開くことによって多大な恩恵が得られます。
今回作成のボックスのサイズは 約600角四方であることは先述しました。
ということは、作れる作品の最大サイズも当然600角以下となります。
これだけのスペースがあれば ほとんどの物は収まるのですが、例えば大きな看板などは入りません。
そこで大きな板状の作品の場合は ここからつっこむことにより製作可能となります。
こんな感じにはみ出しますが、ひっくり返してブラストすればまったく問題ありません。
元々、パソコンデスクの天板はこの部分がスカスカで空いているんですよね。
なので蓋を付けるだけでこんな便利な機能がつきましたw。(ラッキー)
ボックス内にはエアダスターを装備。
ブラスト後の作品はこれで粉を吹き飛ばしてから取り出します。
当然ですが、ここから出るエアーも十分に乾燥している必要があるので、
エアドライヤーポッドを通ったあとで分岐させています。
次は正面の扉兼窓。ここは扉全体を透明アクリル板で作っています。
既成のボックスは側面から作品の出し入れをするタイプが多いですが、正面に扉がある方がどう考えても便利ですよね。
大きな作品でも出し入れしやすいように、目いっぱい大きく作りました。
正面は開口が多いので、15mm角材にてフレームを作って補強しています。
扉自体は加工しやすいアクリル板で作っていますが、そのままブラストするとすぐにスリガラス状に曇ってしまいます。
アクリル板って結構高いので 表面を保護しなければいけません。
対策としてはまず、ガラス防災フィルムを貼ります。
戸棚などのガラスが割れて飛び散らないようにするフィルムですが、
・透明で視認性が良い
・水貼り式でしっかり貼れる。
・安い。
のが理由です。 しかし実は、
防災フィルムもやはりブラストに負けてスリガラス状になってしまうんですよね(゜▽゜)。
なのでさらにその上にサランラップを貼ります。
・ラップなら気軽に張替え出来ること。
・意外とブラストにも強いこと。
・ぴっちり貼れば視認性もいい。
「じゃあ防災フィルム貼る意味ないんじゃないの?」
と思うかもしれませんが、これはあくまでアクリル板自体の保護が目的。
サランラップは端のほうがめくれたり、簡単に破れたりします。
そうなってもアクリル板自体は傷つかない為の防災フィルムです。
扉は3層構造。
本体:アクリル板
アクリル面保護:防災フィルム
表面保護:サランラップ
ラップは3作品毎に張り替えるが、
防災フィルムは1年くらい持ちます。
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ホース先端には、セラミック製ノズルが付きます。
ノズル径は1.8mm。
圧縮空気はここから集約されて吹付られます。
細かい工芸をするのならこの細さが必要になるんですが、
使っていくうちに ブラストに負けて穴は徐々に広がっていくんですよね。
ノズルは消耗品です。
ホース先端部分 ノズルを分解
ノズルの取付けは、真鍮の部品を使っていますが、、、、
これ、なんの部品なんでしょう?
ホームセンターを物色していて たまたまちょうどいいのを見つけたんで使っています(行き当たりばったり)。
ホース自体は普通の水道用耐圧ホース。
サンドブラスト専用のホースもありますが、硬いので取り回しがしにくく、何より高い!。
ゴム質はブラストで削れないのでこれで十分だと思います。
柔らかいので取り回しも楽だし。
高圧で使う事をメインにするなら、専用ホースを使ったほうがいいかもしれません。
それと、大切なのはホースの太さ。
最初、内径15mmのホース(蛇口に直接ねじ込める太さのヤツ)を使っていたんですが、どうも砂の出が安定しなかったんです。
よくよく調べてみると下図のような現象が起きていました。
太いホースは中で気流の速度が遅くなり、砂が分離してホースの中に溜まっていたのでした。
内径9.5mmのホースではこの現象は起きません。
これはホースの挿入部分。
手前をローラーで支えてやることによってスムーズな出し入れが可能になります。
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